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「ブランドからみえるマーケティング戦略」セミナーレポート

2014年9月27日、株式会社アイ・エス・エス・コンサルティング(以下、ISSコンサルティング)主催の『ブランドからみえるマーケティング戦略』セミナーが開催され、CAREER CARVER(キャリアカーバー)が当日の様子を取材しました。本セミナーには日本コカ・コーラ、エスティローダーグループ、アディダス ジャパンのマーケティングキーパーソンが登壇し、第一部の講演では各社の「ブランドの強み」について語られました。第二部では「マーケティング戦略」「組織の強み」「キャリア」を軸にパネルディスカッションが展開されました。

3年をかけてブルーオーシャンに挑んだ『太陽のマテ茶』のマーケティング戦略

日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング本部 コーヒー、ジュース&ニュー・グロース・プラットフォーム バイスプレジデント 和佐高志氏

私が日本コカ・コーラに入社した2009年頃、お茶カテゴリーの市場は競合各社との厳しいシェア争いが展開されていました。この激戦を勝ち抜き、2020年にはトップを獲ることが私の命題です。徹底した調査とデータ分析をもとにポートフォリオ戦略を立て、「どこでどう戦うのか、どうやって勝つのか」を議論してきました。

和佐高志氏

例えば商品をレッドオーシャン、ブルーオーシャンで分けてみると、紅茶や緑茶、トクホ(※特定保健用食品)などは、すでに市場が確立されて競争も激しいレッドオーシャンに分類されます。もちろんこちらも立て直しを図っていくのですが、「太陽のマテ茶」はまだ開拓されていないブルーオーシャンで勝負をかけました。新たなマーケットを作った商品先駆者は、数年先・数十年先もトップシェアを獲り続けることがほとんどだからです。今日はこの「太陽のマテ茶」の事例を紹介しようと思います。

実は「太陽のマテ茶」は市場へ投入するまで企画提案から、3年間、ずっと承認が降りなかったのです。ですからこの機会を使い、「どう転んでも絶対失敗しない」と言えるほど、徹底的にマーケティング戦略を練り上げました。そこでまず消費者動向のリサーチや、市場分析を徹底的に行い、お茶のニーズを探ることから始めました。すると「震災のダメージから早く立ち直って元気になりたい」「魚より肉を食べる人が増えてきた」「肉体をシェイプアップしたい人が増えている」といったニーズが浮かんできたのです。

緑茶、ウーロン茶、紅茶など従来の茶葉はツバキ科で同じ茶葉なのですが、マテ茶はエルバマテという茶葉で、ビタミンやミネラルが豊富。南米では飲むサラダとして人気があります。南米の明るいイメージがアピールできるマテ茶は、元気やエネルギーの源になるような動的シーンでヒットする可能性があります。まさに市場がまだ手掛けていないホワイトスペースにチャレンジするヒントが見つかったのです。さらに、リオでのオリンピックやブラジルでのワールドカップ開催決定なども後押しとなり、2011年に市場への投入が決まったのです。

新しいブランドをブルーオーシャンで出そうという試みをするときは、消費者の動向やモチベーション分析をきっちり定義して、コンセプトを探すことはもちろんのこと、過去の自分の経験、観察してきた点を結び付けて具現化することも大切です。また、今回のように3年間かかったとしても、あきらめずに「絶対いける」と確信をもって、挑戦し続けたパッションも、こうした山を動かすときには必要なことだと思います。

競合分析よりも自分たちの強みを追求する『アヴェダ』のマーケティング戦略

エスティローダーグループ アヴェダ マーケティング部 部長 渡辺由佳氏

私がマーティングに関わるようになったのは、新卒で入社したシンクタンクでマーケティング関係の調査やコンサルティングを担当したことからでした。マーティングの面白さに気付き、学校に戻って学び直したんです。その後、企業の中からマーケティングに関わるほうが面白いのではないかと思い、化粧品会社のマーティング部門に就職しました。そこではCRMやオンラインショップの立ち上げ、商品企画からブランドマネジメントまで、さまざまな経験をしました。もう化粧品はやりきったと思ったときに、アヴェダと出会ったのです。化粧品は高級感や美容効果をアピールするのが一般的なのですが、アヴェダは「環境保全とビジネス両立」を根幹においた大変ユニークなブランドでした。そこに興味を持ち、転職して今年で7年目になります。

渡辺由佳氏

アヴェダは1978年に美容師だったホースト・レッケルバッカーが誕生させたブランドで、1997年にエスティ ローダーグループの一員となりました。2003年に日本展開を開始し、今年で約10年になります。「美と健康と環境」は両立させるものだという考えから、風力発電で製造を行い、容器は再生素材を活用しており、製品の内容物もオーガニック比率を高めるべく日々研究を重ねています。また、美しさは内側からつくられるべきだということから、リラックスできるスパやウエルネスなども展開しています。

また、環境保全の啓蒙活動にも積極的で、きれいな水のキャンペーンを行うなど、透明性と誠実な活動をモットーとしています。「よいこと」をするということに力を入れており、競合分析よりも自分たちの強みを追求することを大事としています。こうした活動やコンセプトは「よいこと」なので、真似されることも大歓迎なのです。ビジネスとしての成長は高付加価値戦略をとっていて、プロのアドバイスやリラックスさせる付加サービスなどに注力しています。日本のヘッドスパや頭皮マッサージブームで生み出されたマッサージケア製品はアジアでも展開されました。日本向けに開発された製品はグローバルに展開されることが多く、全世界での売り上げの1/4を占めるほどです。

アヴェダのブランドとしての本質的な強みは、「ライフスタイルの提案」まで行っていることです。アヴェダを使ったお客様は、効果を実感するだけでなく、「自分のことを大切に出来ている」「社会に役立つことができている」という心の充足感も得られます。自分にも環境にも優しくできるのです。製品提案だけでなく、その先にある日常生活の変化や心の変化まで提案していることが、ブランド力の基礎になっていると思います。

アディダスのDNAはぶらさず、刺激と革新性を追求するマーケティング

アディダス ジャパン株式会社 アディダスマーケティング事業本部 ブランドマーケティングディレクター 河合健太郎氏

2007年にアディダス ジャパンに入社して、今年で7年目になります。2010年から広告・宣伝、広報、デジタル、イベント、店頭販促などブランドマーケティング活動を統括しています。アディダスはプロダクトブランドよりも、コーポレートブランドがメインで行っているため、アディダスどういったビジョンとゴールをもって行っているかがとても大事にしています。そのビジョンとは、「スポーツへの情熱を通じて世界をより良い場所にする」。そのために私たちが存在すると言っても過言ではありません。

河合健太郎氏

アディダスは創始者であるアドルフ・ダスラーが靴職人だったこともあり、商品に対するこだわりがとても強いブランドです。例えばロゴにもなっている3本線ですが、これはもともとスポーツシューズの革が伸びてしまうので、補強線として取り入れたのが始まりでした。靴の3本線がそれだけでアイデンティティーを持ってブランディングできてしまうというのは、アディダスの特徴と言えるでしょう。

アディダスのブランドバリューを紹介しましょう。全世界のアディダス社員や関係者がブランドを作っていくときに、共通のバリューとして体現していることが以下になります。

アヴェダのブランドとしての本質的な強みは、「ライフスタイルの提案」まで行っていることです。アヴェダを使ったお客様は、効果を実感するだけでなく、「自分のことを大切に出来ている」「社会に役立つことができている」という心の充足感も得られます。自分にも環境にも優しくできるのです。製品提案だけでなく、その先にある日常生活の変化や心の変化まで提案していることが、ブランド力の基礎になっていると思います。

Authentic──本物であること
Passion──情熱的であること
Inspiration──創造的であること
Innovative──革新的であること
Committed──真摯に取り組むこと
Honest──誠実であること

私たちは、日本サッカー協会およびFIFAワールドカップとパートナーシップを結んでいて、サッカー日本代表にはユニフォームを提供しています。達成したかったことは、もちろんユニフォームを売ることもなんですが、日本にサッカー文化を根付かせることでした。ヨーロッパのように、老若男女関係なくみんながユニフォームを着て日本代表を応援するような文化を作りたかったんです。

2014 FIFAワールドカップブラジルにおける日本代表のユニフォームのブランドメッセージは「all in or nothing」まさにすべてを賭ける覚悟はあるのか、というものでした。円陣がテーマで、ファンへのアンサーに対してユニフォームで円陣を組むと赤い輪になるというストーリーです。これまでユニフォームはワールドカップの直前に買う人が多かったのですが、それを変革させようと日本中を赤い輪にするにするべく、全国北海道から沖縄までイベントを展開してきました。その結果、2014年4月末時点で前大会の同時期に比べ、約7倍の売上を上げることができたのです。

私たちがブランドマーケティングで何を特に重視しているのかというと、やはりInspirationalとInnovative。常に刺激を与える続けることと、革新性をどう作っていくかということです。ブランドのDNAである軸はぶらさずに、いかに新しい軸を作っていくか、今ある常識をどう変えていくか、そして不可能なんてあり得ない、これらのスピリットで常にブランドと向き合っているのです。

ブランドから紐解く「マーケティング戦略」「組織の強み」「キャリア」

第二部は、ISSコンサルティング代表取締役社長の関口真由美さんがファシリテータとなり、「ブランド」「コーポレート」「キャリア」を軸にディスカッションが展開されました。

株式会社アイ・エス・エス・コンサルティング(ISSコンサルティング)代表取締役社長 関口真由美氏

関口真由美氏

関口:
今日は参加者の方に「ブランドの強さとは何か?」というアンケートのご協力いただきました。その結果、「安心感・信頼性」「普遍性・継続性」「認知度・知名度」と大きく3つのカテゴライズで回答がありました。皆さんの感想・ご意見はいかがですか?

河合:
私がブランドで大事だと思っていることは、「売れる」こと。ブランドの認知度が上がると購入者が増えるということが、マーケティング戦略で勝つということだと思います。

渡辺:
アヴェダのブランドと重ねて考えると、「安心感・信頼性」に共感を覚えますね。ただ、独自でユニークなブランドには、コアなファンが集まっても新しいファンの獲得が難しいことがある。それは、課題に感じます。アヴェダを使うことで、朝から夜までの生活のリズムや気持ちを変えられるライフスタイルを提案していきたいと思いました。

和佐:
アンケートででてきた回答とは違う切り口で答えると、「金額に換算したらいくらなのか?」ということです。株式だったら金額換算にもなりますよね。新商品は1000個出しても3本くらいしか当たらないと言われているなかで、3年間軌道にのせたら定番になったら普遍性を持ちます。ブランドを作る時期なのか、育てる時期なのか、スパンで比較しても面白いんじゃないかな。

河合:
アディダスもライフスタイルに近いですね。有名選手と同じシューズを履くだけで、速く走れるんじゃないかとその気にさせる期待感とか。店舗で同じものが並んでいるという経済的な強さもありますね。

和佐高志氏

和佐:
コカ・コーラはグローバルの売上で見ると、やはり炭酸飲料の比率がまだまだ高いです。ですからミャンマーでサンプリングした映像の中で、初めてコーラを飲む人たちの驚きや感動している様子を見たときは新鮮な気持ちになりました。世界でコーラを飲んだことがない人たちに、ハピネスでポジティブな感動を届けることができる、まだまだいろいろなことができるなと思いましたね。また日本はいろんな飲料を飲む文化をありますが、そこに対して日本独自のR&Dやメディア、マーケティング部隊を持っていることが、やはりコカ・コーラの大きな強みではないでしょうか。

渡辺:
エスティローダーグループでは、触れ合うすべての人に最高のものを提供するというグループビジョンがあり、高品質を提供することに特化しています。また、弊社は社員、特に現場の販売員を大切にするという文化があります。現場で商品の説明をしやすさや、売りやすさなどを徹底的にサポートしているのも特徴的ですね。外資系企業ですが、社員はみんな家族だから大切にするという社風があるせいか、勤続年数が長い人が多いことが特徴であり強みに繋がっていると思います。

関口:
最後にキャリアについてのアドバイスをいただけますか。

和佐:
私がマーケティングに興味を持ったのは、大学生の時です。当時はジャーナリストになりたいと思い、新聞記者になることを専門にした学部に属していました。最初の研究テーマは「なぜ、キリンビールばかりが支持されるのか」。ところがその後、当時倒産するとも言われていたアサヒビールがスーパードライを出して一発逆転。卒論は、「アサヒビールのV字回復はなぜ起こったのか」に変わったのです。この経験を通じて、第三者の記者としてではなく、自分でマーケティングをやりたいと思うようになりました。それから、マーケティング力に定評のあるP&Gに入社しました。P&Gは18年勤め、複数のカテゴリーを統括するゼネラルマネージャーも経験しました。その後全く新しいことにチャレンジしたくなり、ゴルフ場経営会社に転職しその後、コカ・コーラに転じたという次第です。大学時代に興味を覚えた飲料業界、P&Gで身につけたマーケティングスキル。それらが今、1つに繋がって私の力になっています。皆さんも、今から将来の糧になるドットを集める作業をしておけば、いつが必ず繋がる時がくるはずです。

関口真由美氏

渡辺:
20年後、自分が何をしているかは誰にも分からないものです。ですから、今興味があること、やってみたいと思ったことを思い切ってやってみることが大切です。飛び込んでみて、もし違っていれば変わってもいいんです。私が新卒でシンクタンクに入社したのは、「なんとなく面白そうだな」という理由でした。そして就職後にマーケティングに携わる中で、自分で実際にやりたいと思うようになりました。その中でも、「人の感性に訴えかけるもの」に携わりたくて、化粧品会社を選びました。化粧品のマーケティングを手がけてみると、これもやはり非常に楽しかったのです。それから、化粧品単体にとどまらず、ブランドそのものを育ててみたいと思うようになり、現在の会社に入社しました。興味があることだから、全力で取り組める。全力で取り組めるから、結果がでる。結果が出れば、次のステージに上がることができる。人生はその連続です。だからこそ、原点である「なんとなく面白そう」と思えることに取り組んでみることが大切だと思います。

渡辺由佳氏

河合:
私は、大学も就職も決して第一希望に行けたわけではなく、そこになんとなくモヤモヤ感というかコンプレックスを感じていました。そんな気持ちから、25才のときに立てたのが5年刻みの目標計画です。5歳きざみで目標を作って変化を起こしてやろうって。25才の時に、30才や、35才でどんな自分になっていたいのか考えました。これからの自分が10年後、何をしているかは分かりません。しかし、今よりも更に達成感と自信を持つ自分でありたい。そのために目標を決めて、自分が伸ばすべきエリアを強化する。その連続が、より良い自分を作ると思います。

河合健太郎氏

セミナーを終えて

今回のセミナーでは誰もが知っているブランド、かつ、それぞれ異なる業界でのブランドマーケティングのビジョンや事例、そのマーケティングの第一線で活躍されている御三方のキャリアを聞き、刺激を受けた方は大勢いらっしゃったのではないでしょうか。今回外資系企業のマーケッターの方が多いと思いきや、国内の大手メーカーや商社、行政機関ほか、さまざまな業界・業種の方に参加いただきました。このISSコンサルティング主催セミナーは、転職活動をしている人だけではなく、現在の仕事に役立てたいとか、自分の会社を元気にしたいとか、それこそマーケティングを勉強したいからという人たちにも参加いただいています。もちろん、このセミナーに参加したことで転職を決意する方もいます。こうしたセミナーを通じて、皆さんが自身のキャリアを考えるきっかけとなっていただけばうれしい限りです。

また、ISSコンサルティングでは、外資系企業で活躍するビジネスリーダーたちに仕事観やキャリアを伺ったインタビュー記事を連載しています。今回登壇いただいた和佐さん、渡辺さん、河合さんのインタビュー掲載されていますので、ぜひこちらも合わせてご覧いただけると幸いです。