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2019.12.19

未経験からコンサルティングファームに転職するには?

キャリア インキュベーション株式会社

大谷 幸子氏

ディレクター 大谷 幸子氏

大学卒業後、通信系SIerを経て人材紹介会社に転職。法人営業としてコンサルファーム、IT、コンシューマなど多岐にわたる業種を担当。キャリアアドバイザーではエンジニア、営業、バックオフィス職種の転職支援に携わる。現在は、両面のキャリアコンサルタントとして、コンサルティングファーム全般と、事業会社、スタートアップを担当。

「成長できそう」「年収が高い」などの理由から、キャリアの選択肢のひとつとしてコンサルティングファームを希望する方も多いようです。相応のスキルが求められるイメージがありますが、未経験でもコンサルティングファームへの転職は可能なのでしょうか。

そこで今回は、コンサルティング、投資ファンドやM&Aプロフェッショナル、経営企画や経営幹部の転職支援を行うキャリアインキュベーション株式会社のディレクターである大谷 幸子氏にインタビューし、未経験からコンサルタントを目指す場合の前提知識や転職活動のポイントをご紹介いたします。

INDEX

・コンサルティング業界とは
・コンサル未経験者の採用傾向
・未経験からコンサルティングファームへの転職Q&A

コンサルティング業界とは

クライアントの抱える課題やビジネステーマに対して、コンサルティングファームが提供する業務範囲は「解決策の提案」から「実行」そして「運用」まで幅があり、企業や案件によってプロジェクト期間や働き方も異なります。

コンサルティング業界の全体概要

コンサルティングのテーマは、業務フローに従って領域が分かれています。具体的には、経営・事業戦略から、プロセス改善などの業務戦略、そして付随するIT戦略と実際のシステム開発・運用までのコンサルティングです。テクノロジーの進化により、ビジネスとITは切り離せません。近年では、業務フローに関わらず、デジタル化やサイバーセキュリティなど「テクノロジーの活用」も、コンサルティングの重要なテーマとなっています。

コンサルティング業界概要図

コンサルティング業界概要図

戦略系コンサルティングファームとは

企業の成長戦略やグローバル戦略などといった特定テーマに対して、おおよそ数か月~半年程度のプロジェクト期間で企業の代表や役員クラスにアウトプットを提示します。業界や領域ごとの担当制ではなく、例えば1案件目が「金融機関のデジタライゼーション」、2案件目が「メーカーの工場に関するIoT戦略」、3案件目が「消費財メーカーの三カ年成長戦略」など、様々な業界・テーマの案件にアサインされるため、論理的思考など基礎能力の高さが求められる傾向があります。

なお、戦略提案後の業務コンサルティングも行う企業もありますが、その場合は数か月~1年以上など中期プロジェクトも含まれ、取り扱うテーマも「全社業務改革における戦略設計及びITグランドデザイン」など、具体性が高くなります。

戦略系ファームの企業例(五十音順)
アーサー・ディ・リトル、A.T.カーニー、経営共創基盤、ドリームインキュベータ、ベイン・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、マッキンゼー・アンド・カンパニー、ローランド・ベルガーなど

総合系コンサルティングファームとは

その名の通り、経営・事業戦略から業務戦略、ITの導入から運用まで一気通貫でコンサルティングサービスを提供するファーム群を指します。総合ファームの場合、従業員数が数千人規模の企業もあるため、総合系コンサルティングでも業界等でチームが分かれている場合もあります。組織の分類は企業ごとに異なりますが、金融や製造業、ヘルスケアなど、各ファームの得意領域は独立した部署を持っていることが多いようです。そのため、ファームの組織体制を知ることで、強みや注力領域を掴むことができます。

総合系ファームの企業例(五十音順)
アクセンチュア、アビームコンサルティング、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング、KPMGコンサルティング、デロイト トーマツ コンサルティング、日本アイ・ビー・エム、PwCコンサルティングなど

シンクタンク系コンサルティングファームとは

社名「〇〇総合研究所」「〇〇総研」などに代表される、調査・リサーチとIT戦略、マネジメントコンサルティングを得意とするファーム群です。シンクタンク系ファームは日系大手企業のグループ企業が多いことが特徴のひとつです。

シンクタンク系ファームの企業例(五十音順)
エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所、大和総研、日本総合研究所、野村総合研究所、富士通総研、みずほ情報総研、みずほ総合研究所、三菱総合研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティングなど

IT系コンサルティングファームとは

IT戦略の提案、ベンダーの選定、システム開発の支援、保守・運用まで、クライアントが抱えるIT領域の課題に特化してコンサルティングを行うファーム群です。プロジェクトマネジメント、ERP(基幹システム)・BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)支援など企業によって得意分野があります。

IT系ファームの企業例(五十音順)
ウルシステムズ、ガートナージャパン、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ、フューチャーアーキテクトなど

特化型コンサルティングファームとは

企業のデジタライゼーション、セキュリティなどのIT戦略、M&A戦略、人事・組織構築、マーケティングなど、特定の領域を専門とするファーム群です。

特化型ファームの企業例(五十音順)
財務系:EYトランザクション・アドバイザリー・サービス、KPMG FAS、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー、PwCアドバイザリーなど
監査法人系:有限責任 あずさ監査法人、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCあらた有限責任監査法人など
人事・組織系:コーン・フェリー・ジャパン、タワーズワトソン、マーサー ジャパンなど

コンサル未経験者の採用傾向

コンサルティング未経験の場合、財務や人事といった専門性を求められる特化型ファームよりも、戦略系や総合系、シンクタンク系ファームの方がポテンシャルを評価されるチャンスが多く、採用可能性は高い傾向にあります。もちろん、特定の業界の経験を活かして、業界特化型ファームへの転職の可能性もゼロではありませんが、社数が限られるため選択肢が少なくなってしまうことがあります。

戦略系ファームの採用傾向と転職のポイント

以前は未経験で戦略系ファームへの転職は「非常に難易度が高い」とされていましたが、コンサルティングマーケットが活況であることや、多様なクライアントニーズに応えるために、戦略ファームもデジタルやオペレーションチームを立ち上げています。採用職種も増え、結果としてターゲットが広がっています。NewITや製造、マーケティングなど、コンサルティング未経験でも尖った特定スキルを持った方、現場を熟知するスペシャリスト等が採用されるケースも増えています。

とはいえ、戦略系ファームの選考はテスト(多くがWeb形式)を設けており、フェルミ推定やケース面接など独自のテストを通じて能力や適性を判断しています。転職エージェント企業でも対策支援を行っているケースはありますが、最終的にはご自身で勉強することが重要。戦略系ファームにチャレンジするのであれば、仕事を続けながらテストやフェルミの勉強をする気概が必要です。

総合系ファームの採用傾向と転職のポイント

総合系ファームは業界やソリューションによって組織が細分化されており、ファームによっては「第一志望」「第二志望」…と、複数のポジションに応募することが可能です。思い切ったキャリアチェンジを望まれ消費財などの身近な製品を扱う業界や、デジタルなど最新領域を希望される方が多いのですが、未経験からコンサルティング業界に転職する場合は、まったく専門外の業界・領域を志望するよりも、これまでの経験・知識を活かす転職をお勧めしています。例えばメーカーご出身であれば、ものづくり系テクノロジーを扱うファームに応募する、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の経験を活かしてSCMコンサルタントのポジションに応募する、などです。

なぜなら、未経験からコンサルタントになる時点で職種が100%変わります。さらに業界も変えて転職するのは、相当タフな選択肢となるからです。入社することができても、新しい業務と業界慣習に慣れるまでに時間を要してしまいます。能力の高い人材が集まるコンサルティングファームでは、入社がゴールではなく、活躍し、その後昇格することがとても重要です。成果を出せば異動も叶いやすくなるので、まずは経験を活かして転職し、ゆくゆくは希望の業界・領域に異動するという方法も選択肢のひとつです。

もちろん業界未経験での転職事例も稀にはあります。例えば営業職の方が業務外でプログラミングを自ら勉強し、趣味でモバイルアプリを開発した経験を活かしてデジタル領域を志望、無事に内定した事例もあります。業界研究や自己努力を行った上で貢献ポイントのアピールは必須です。

未経験からコンサルティングファームへの転職Q&A

未経験からコンサルティング業界を目指す方の「よくある疑問」にお答えします。

Q.事業会社で働いていますが、中途採用枠でコンサルに転職したいと考えています。意識しておくことはありますか?

基本的にコンサルタントの仕事はクライアントワークです。わかりやすく言うとクライアントの売り上げを伸ばすことが目的となるので、自社ではないクライアントのために全力で仕事をする、というスタンスに馴染めず、第3者の立場でいることに後々違和感を覚える方もいるようです。「クライアントのために」仕事をするということをきちんと理解しておく必要があります。そして、歴史ある事業だとしても「事業売却」「事業撤退」などの判断が必要な時もあります。これまで事業会社で自社製品・サービスに愛着やこだわりを持っていた方は、コンサルタントならではの判断軸に戸惑うことがあるのを見てきています。

また、「新規事業の立ち上げ」や「自社にないシナジーを生むための企業買収」など、“ゼロから1を生み出す”案件が増えています。こうしたテーマでは、既存に捉われない思考が重要。例えば事業会社では“A→B→C”のプロセスが常識だったとしても、プロジェクトによっては“A→F→X”のような発想の転換を求められることもあります。そのためには知的好奇心が必要。興味のない分野でも「どうしたら面白くなるか」「目の前の仕事がどのように世の中へ還元できるのか」とポジティブに変換し、様々なことを吸収してアウトプットする姿勢が重要です。

Q.英語に自信がないのですが、戦略系ファームへの転職は可能でしょうか?

未経験かつ語学力に自信がない場合は、たとえ戦略系ファームに入社したとしても、業務スピードや英語のコミュニケーションについていけないかもしれません。そのため、キャリアステップのひとつとして、これまでの経験・知識を活かしてまずは高い英語力を入社時から求めないポジションに転職して、語学力を磨きながらグローバルプロジェクトを経験した後に、戦略系ファームにチャレンジするという方法もあります。

なお、「自信がない」がどのレベルなのかが客観的に分からないので、まず語学レベルをTOEIC等でスコア化しておくことをお勧めします。

Q.ある程度志望は絞っているものの、どのファームが本当に自分に合っているのか分かりません。転職活動をどのように進めたらいいのでしょうか?

コンサルティング業界は日々進化しているので、業界研究をひとりで行うには限界があります。ご自身で業界研究を行った上で、転職エージェントに相談し、足りない点を補うことをお勧めします。行きたいファームが明確だとしても、状況によっては希望部署で未経験の採用ポジションがない可能性があります。募集状況を確認することで、「採用が始まるまで待つ」のか、「いま応募できるところに転職する」のか、転職のタイミングを見極めることができるでしょう。

また、現職のプロジェクトの状況や異動のタイミングなど、「辞め時」も転職活動では重要な要素です。退職交渉や調整に難航するケースもあるので、転職を明確に決めていなくても、まず転職エージェントに相談してみることをお勧めします。

Q.転職エージェントを選ぶ際のポイントはありますか?

コンサルティングファームの転職支援を行う転職エージェントは数多く、各社それぞれ強みをお持ちですので、ご自身が合うと思ったエージェントが第一に良いと思います。しいて言うなら、「転職支援年数が長い転職エージェントを選ぶ」というのも選ぶ観点のひとつかもしれません。なぜならコンサルティング業界は合併と買収を繰り返しており、各ファームには歴史と変遷があります。長年業界に携わっているヘッドハンターであれば、「△△社は過去に合併した〇〇社の流れを汲むため社風や仕事の進め方は〇〇式」など、深い企業・組織知識をお持ちだと思います。あわせて、長期リレーションを構築できていれば、長い歴史の上に最新の企業動向や人脈も持ち合わせているでしょう。入社後に活躍できるかどうかを見据えた上で、あなたの経験にマッチしたポジションを一緒に考えてくれるのではないでしょうか。

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