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2020.01.22

外部招聘される人材となるための原理原則

先日、キャリアカーバー主催の登録者の皆さま向けセミナーで講演をさせていただきました。
転職すべきか?留まるべきか?ミドル世代の成功キャリア術」というテーマでしたが、当コラム読者の皆さんにもご興味あるところではないでしょうか。今回と次回、この講演に関連してのお話をしてみたいと思います。講演にご参加頂いた皆さんには、先日のお話の補足にもなりますので、ぜひ併せてお読みください。
今回は「そもそも、転職市場での人材価値はどう推し量られるのか」について、次回は「どのようなときに転職すべきで、どのようなときに現職に留まるべきなのか」についてです。

転職市場での人材価値は「お値打ち人材」か、「お墨付き人材」かで決まる

そもそも、転職市場での人材価値はどう推し量られるのでしょうか?
あなたが転職市場から求められる理由、それは、ずばり、次の2点のいずれか(だけ)です。

あなたが、
(1)「お値打ち人材」か
(2)「お墨付き人材」か

「お値打ち人材」とは、現在の人材価値(期待できる仕事力・持っている人脈や営業基盤・その他付随して発揮してもらえそうな業務上の特技や専門性など)と比べて、その人の年収レベルが低く見える人材のことです。
注意していただきたいのは、絶対額としての年収が低いことがよい、といっているのではないことです。700万円の年収だが1,000万円の人と同じパフォーマンスが期待できる、1,000万円の年収だが1,500万円クラスの職務レベルだ、2,000万円だが5,000万円以上の社長と比べて遜色ない------こういうことです。

一方、「お墨付き人材」とは、客観的に目に見える世界でその人材が評価されている、ブランドを確立している人。複数の実績が業界やメディアで取り上げられ評価されている人を指します。業界有名人、タレント経営者などが、このパターンを極めた方ですね。

結局、抜擢される人材、外部から招聘される人材というのは、この「お値打ち人材」か、「お墨付き人材」か。あるいは、その双方か。これしかありません。最低でもいずれかひとつを満たすことで、あなたは〝転職市場から求められる人材“と見なされます。

ある外資系マーケティング部長の話

これに関連して、折々お話ししている事例がありますので、ここでもご紹介してみたいと思います。外資系企業で働いてきたエグゼクティブの方によくある話です。

あるマーケティング部長の方がいたとしましょう。年齢は52歳です。彼は、新卒で日本の消費財メーカーに入社し、マーケティング部に配属され、手腕を発揮しました。その力を乞われ、30代半ばに外資系ブランド企業にヘッドハントされます。
それ以降、50歳過ぎとなった今まで、2~3年毎に外資系のマーケティング責任者としてヘッドハントされ転職を繰り返してきました。

転職する毎に毎回100万~200万円程度、年収をUPさせ、彼も「転職すれば、年収を上げることができる」と自信満々でつい最近まで来たのです。
ところが、それが一転、一昨年頃から様子がおかしい。これまでは、ちょっとその企業の調子が悪くなったり、組織や同僚との折り合いが悪くなると、知り合いのヘッドハンターたちに声を掛け、「そろそろ動くよ。頼む」というと、それなりの案件を持ってきてくれました。それが、はたとなくなってしまったのです。「どうなってるんだ??」 そんな折に、私は彼とお会いすることになりました。「井上さん、聞いてよ。おかしいよね」。

いえ、おかしくなんか、ありません。
彼は、この「お値打ち人材」「お墨付き人材」ロジックを理解していないだけです。

そもそも、どの外資系企業も、彼の前に前任のマーケティング部長がいました。それを彼はリプレースし続けることで、今日まで来たのです。
最初は彼も、30代半ばの若さで、年収も国内系企業での年収700~800万円から1,000万円前後での外資デビューを図りました。それ以降、毎回の転職毎に年収を上げ続け、いまや彼は年収2,000万円の人材。
そんな彼の後ろには、かつての彼のような、同じ職務レベルで数百万程度年収の低い、年齢の若い候補人材が、あとを追ってきているのです。当然、こうやって人を入れ替えてきている企業からすれば、彼らを「お値打ち人材」にリプレースし、雇用コストを圧縮し続けます。(外資系企業の年度毎の契約更改には、概ねこうしたロジックが常に織り込まれています。)

キャリア「戦術」ではなく、キャリア「コンセプト」「戦略」を持とう

彼の問題は、その状況を認識せず、マーケティング部長としての職務からその上の経営ポジションレベルへの職務レベルアップを図らなかったことに尽きるでしょう。
事前の策としては、上記の構造を認識した上で、「更に上の役割を期待される」努力とパフォーマンスを出すこと(例えば、マーケティング担当役員、あるいは事業部長、COO、社長クラスの期待とポジション提示を受けるくらいの)がひとつ。
あるいは、自分自身を部長職レベルまでと認識した上で、その職務で長く働ける企業(例えば、日系の中堅中小企業など)を探す(その際は、年収を数十%下げる覚悟も必要ですし、何よりもこれまでの外資的カルチャーとは異なる企業風土・組織風土にしっかりフィットすることが欠かせません)ことです。

率直に申し上げて、ここまで来てしまって2~3年毎に転職を繰り返し続けている経歴を作ってしまいますと、外資では同等以上の年収・ポジションの提示は厳しい人材、日系企業にとっては自社に根付いてしっかり働いてくれるとは思えない人材、というレッテルが貼られてしまっており、相応の責任あるポジションを得ることが難しくなってしまうことが多いのです。
こうしたご経歴の方から転職のご相談を頂き、「これからは日系企業でしっかり腰を据えて長く働きたいと思っています」とお話しいただくのですが、これを額面通りに受け取ってくれる雇用先経営者は少ないと思っておくべきです。(なによりも短期転職癖がついてしまっている人が、シニアになって変わるということは、残念ながらほぼないということを、私も長らくこの業界で多くの人たちのキャリアを見てきて痛感しています。)

キャリアは決して短期サバイバルの「戦術」(例えば転職テクニック、面接テクニック)だけでは済みません。そのツケは、必ず後日、より大きく、シビアな現実となって返ってきます。日々に追われていたとしても、長期的視点でのキャリア「コンセプト」「戦略」を持って、常に定点観測し、自分の足場を確立し続けることが、なにより重要です。

さて、いまのあなたは、いかがでしょうか? 「お値打ち人材」「お墨付き人材」、いずれに該当するでしょう?
もし該当しなかったとすれば、これからどちらになるべく仕事力を磨いていくのかを、考えられると良いかと思います。

一般的に言って、どんなステージの方であっても、常に「お値打ち人材」であるよう努力すべきだと、私は考えます。
いま得ている報酬に対して、120%、150%以上の成果を会社に返すことを、常に目指し、自分を高め、業務に邁進する。そんな気概を持ち続けることが、あなたを常に、「転職市場で価値のある人材」に位置付けてくれるのです。

ではまた、次回!

株式会社 経営者JP 代表取締役社長・CEO
井上 和幸(いのうえ かずゆき)

1989年早稲田大学卒業後、リクルート入社。2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年よりリクルート・エックス(現・リクルートエグゼクティブエージェント)。2010年に経営者JPを設立、代表取締役社長・CEOに就任。 『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ずるいマネジメント』(SBクリエイティブ)『30代最後の転職を成功させる方法』(かんき出版)など著書多数。

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