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2015.02.01

「人工知能は私たちを滅ぼすのか」著者が語る AIで変わる10年後の生活

近年ますます注目される人工知能。「10年後には今ある仕事のうち、半分がロボットや人工知能(AI)に取って代わられる」というニュースが話題になったのも記憶に新しい。囲碁の対局では人工知能がプロ棋士に勝ち、医療分野では医師も特定できなかった病名を見抜いて難病患者を救うなど、テレビや新聞で人工知能の活躍を見聞きすることが多くなっている。

そこで、「人工知能は私たちを滅ぼすのか―計算機が神になる100年の物語(ダイヤモンド社)」の著者である児玉哲彦氏に、人工知能とはいったい何者で、私たちの生活をどう変えていくのか、どんな仕事であれば人工知能が普及した時代でも生き残っていけるのかを伺い、その内容をお送りしたい。

人工知能とは

腕を組む児玉哲彦さん

最初に、人工知能とはいったい何者なのでしょうか。

簡単に言うと、『人が作った知能』が人工知能です。では知能とは何か? という話になるかと思いますが、今日一般的に用いられている「人工知能」という言葉の前提は、『人間の知能は計算である』というものです。つまり、情報を計算することが人工知能である、と言えます。

計算というと、電卓とかそういったものも人工知能に含まれるのでしょうか。

人工知能には3つの段階があると私は思っています。

第一段階には、計算機やエクセルのような自動的に計算できるもの。会社のデータべースからデータを取ってきて、そのデータを元にグラフを作ったりCSVを作成したりするということもこれに含まれます。

今まさに開発が進んでいる第二段階では、感覚的な情報を扱うことができるようになってきています。音声を認識するとか、人間の動きを認識する、画像に何が映っているかも認識する。そして第三段階では、ただ感覚的情報を認識して終わりではなく、その情報を元に『現実の世界で動く』、つまりアウトプットまでできるようになってきているんです。

それは例えば、人工知能が自分の通り道にある障害物の大きさなどを認識して、避けたり動かしたりする、ということでしょうか。

その通りです。まず知能の定義には、今まで出会ったことのない状況でもその状況から判断をして行動をする、という意味が含まれています。不確実な状況を予測して行動するのです。逆の例で言うと、工場の中で決まった位置にビスを打つ機械はあまり賢いとは感じないですよね。『決められたプログラム通りにこなすこと』は知能としての段階は低いんです。

囲碁で人工知能が人間に勝ったことがニュースになっていましたが、人工知能ということは、勝ち手がプログラミングされていたわけではなく、常に変化する盤面の状況から、有利な手を人工知能自ら考えて行動をしたことで人間に勝った、ということなんですね。

はい。そもそも囲碁の盤面のパターンは宇宙の原子より多いので、全パターンを記憶しておくことはできません。単純なパターン応答では到底勝つことはできないんですね。

最近の人工知能は囲碁の盤面を見て、なんとなくここのエリアが勝ってるぞ、負けてるぞ、だからここに置いたらいいんじゃないか、という視点で次の手を指しています。これって、人間もほとんど同じ仕組みで考えているんです。

人間の場合は脳の大脳新皮質というところで、次はこうなりそうだ、という予測を立てています。最近の人工知能はこういった人間の脳の仕組みを真似しているんです。

進化する人工知能によって生活はどう変わるのか

話す児玉哲彦さん

進化が著しい人工知能ですが、人工知能が普及することによって生活はどう変化するのでしょうか?

1週間毎日ラーメンを食べるとか、野菜を食べないなんて方もいるかもしれませんが、今後は食事や睡眠に関する健康データを保険会社が要求するようになってくるでしょう。データを見ることで、その人の健康リスクが見えやすくなるわけですから。そうすると、当然不健康な生活を送っている人は保険に入れなかったり、保険金額が高くなったりします。

そして、健康管理が経済的なインセンティブになってくると、ライフスタイルもきちんとせざるを得なくなる。そうなるとまず、朝二度寝をする、朝ごはんを食べない、運動をしない、ゲームをして夜更かしをする、といった生活はしにくくなると思います。

睡眠の管理はすでに進んでいて、自分のカレンダーの予定と連動して自動的に起こしてくれるアプリもあります。まさに、超管理社会の到来ですね。

人工知能によってSFの世界が現実化する可能性は?

本 人工知能は私たちを滅ぼすのか

生活が便利になりそうだとワクワクする一方、SF映画のように人間の司令に対して、指示をはねのけたり反乱を起こしたりする人工知能が生まれるのではないか? という不安に関する議論もあるかと思いますが、いかがでしょうか?

食べる・子孫を残すといった『生命的欲求』と『知能』のどちらが強いかを比べたら、『生命的欲求』の方がより生命体にとっては根本的ですよね。でも、人工知能というのは、人間の『知能』だけを抜き出しているので、『欲求』はないんです。だから『お腹が減ったから何か食べたい』とか『モテたい』といった欲求は持っていません。

また、人工知能に欲求を持たせるか否かの議論についてですが、個人的には、人工知能に欲求は持たせない方がいいと思っています。それこそ、SF映画のようにコントロールできなくなる可能性がありますからね。

世界的にも「欲求」を持たせない方がいい、という流れなんでしょうか?

そもそも人工知能に欲求を持たせよう、というのは非常に日本人的な考えなんです。

欧米ではキリスト教の影響が強いため、人間のようなものを作れるのは神様しかいないという考えが一般的。逆に日本は、生物・無機物を問わないすべてのものの中に霊魂が宿っているというアニミズムの考えが根強いんです。

だから、擬人化やキャラクター化が多いのかもしれません。こういった宗教観もあって、今は欲求を持たせないという方向で進んでいます。

人工知能によって仕事は消える?

「10年後には今ある仕事のうち、半分がなくなる」と言われていますが、児玉さんはどのようにお考えでしょうか。

バックオフィス系はほとんど人から人工知能に置き換わると思います。経理や総務、人事も一部は置き換わるでしょう。例えば会議室の管理などは、音声認識ソフトが代わりにやってくれるようになると思います。

話す児玉哲彦さん

「人事も」と仰いましたが、採用活動も人工知能で行われるようになるのでしょうか?

採用はちょっと難しいでしょうね。人工知能が特定の用途に使いにくい理由を、『評価関数がない』っていう言い方をするんですけど、採用はまさにそれなんです。

能力の部分だけを見て採用するのって難しいじゃないですか。人柄や会社との相性、ビジョンが合うかといった問題もありますよね。役員とものすごく気があって採用される場合もあるかもしれない。採用は人間の主観的な判断が大きく関わる部分なので、定量的な評価軸から物事を判断する人工知能との相性は良くないかもしれません。

失われる仕事がある中、今後も生き残れる人材とは?

人工知能が普及すると今までと評価される人材も変わってくるのでしょうか。

人工知能が当たり前の世界では、真面目にタスクをこなすタイプの人は、現代と違って尊敬されにくくなります。それはロボットがやればいい、という考えが普及してくるんです。だから色んなことがそつなく出来るゼネラルタイプよりも、すごくニッチな人材の方が求められるようになると思います。

例えば私が創業したアトモスデザインというデザイン会社の場合ですが、受託開発をやっているにも関わらず、ウェブサイトに連絡先を一切開示していないんです。そして作る製品は思いっきりニッチな製品になっている。口コミや紹介じゃないとこの会社にはたどり着けないので、逆に顧客はその会社がどんな製品を作るのか知っているし、依頼意欲も強い段階でお互い繋がれるので、効率がいいんです。

プログラミングもできて、農業もできて、コンサルティングもできる、といった一見離れていそうなキャリア経歴でも、その方がオリジナル性があって良い、という考えもあるかと思いますが、いかがでしょうか?

何ができるかも大事ですが、結局は価値観とか意志によってどれだけ事業をデザインできるかだと思います。『ウェブ進化論』の著者・梅田望夫さんが提唱されている、『高速道路の先理論』というものがあります。最近では色んな情報が得やすくなり、ある程度までは高速道路のように昔よりもすぐに手に入れることができるようになりました。だからこそ、高速道路の先で得た知識や情報を統合して、何かを作り出せるような『複数のものを統合して新しい価値を創り出す力』、いわゆるプロデュース力が大切なのではないでしょうか。

『複数のものを統合して新しい価値を創り出す』というのは、とても難しいことだと思うのですが、その力が『ない人』と『ある人』の大きな違いはなんでしょう?

この力ばかりは経験することでしか磨かれないと思います。なぜスティーブ・ジョブズがあんなにコンピューターで成功してるかというと、世界で一番色々なコンピューターを生み出しているからでしょうね。失敗した、と世間に思われても何度もPDCAを繰り返し、新しい価値を作ることを繰り返さないといけないと思います。

人工知能時代にも生き残れる人材を育てるには

話す児玉哲彦さん

これから生まれてくる子どもたちは、生まれながらに人工知能と共存してくわけですが、教育も変わってくるのでしょうか。

とても興味深いことに、世界的に活躍しているIT企業のエンジニアには、シュタイナー教育を受けている人がとても多いです。

シュタイナー教育というのは、初等教育における教育法のひとつなのですが、子どもに講義などは行わないし、何も教えないんです。その一方で、感覚刺激を与えられる遊具や環境を用意して自由に行動させます。例えばスマートフォンで動画を見続けるような受動的な楽しみだけではなく、子どもが主体性を持って遊んだり、ものづくりをしたりする上でのヒントを得られます。

形式的な数式を解くことや、記憶力の部分は人工知能が得意とするところなので、ここが出来てもあまり意味がなくなってくる。人工知能ができない、創造性やプロジェクトを作り上げる力を伸ばしていくと、今後の世界では活躍できるかもしれません。逆に数学の天才になって人工知能の作り手に回るというのもいいですけど、その道はかなり突き詰めることができる人でないと難しいかもしれません。

人工知能時代に備えて今から何をすればいいのか

今からでも、人工知能の普及の前にしておいた方がいいことはありますか?

まずは新しいテクノロジーやソリューションを恐れずに試してみるということ。まだどんなテクノロジーがベストかは決まっていないので、クラウドがどんなものか、AR(仮想現実)がどんなものかということを体験して、試行錯誤してみましょう。

また、最先端の技術に対応できるかは、環境もすごく大事です。過去の遺産を使い続けている企業に居て新しい情報や技術に触れられないというのは、キャリアにとっては良くはないかもしれません。

更に言うと、今はまだプログラミングができればエンジニアとして評価されるといったことがありますが、これからはプログラミングも基礎的な能力になってしまうでしょう。すでにバックオフィスの人も含めて、全社員がプログラミングをできるようにしようと動き出している会社も出てきています。これからの未来を生きる人は、プログラミングを「エクセルが使える」くらい基礎的な能力だと思って、今からでも学んでおいたほうがいいでしょうね。

最後に

人工知能時代を生きるビジネスパーソンにメッセージをお願いします。

人工知能が出来ることや得意なこととは競争せずに、人間しか出来ない領域で勝負していってください。評価関数があって、自動化できるものは機械に置き換えられる可能性が高いため、そうではない価値観を追求し、チャレンジしていくことが、人工知能が普及しても活躍できる人材であるためには、回り道のようで一番の近道だと思います。

インタビューを終えて

今回のインタビュー記事をご覧になり、「人工知能で本当に自分の仕事が劇的に変わるのか?」と思っていた方も、少しずつ人工知能の活かし方、共存する姿が見えてきたのではないだろうか。

今後人工知能は、私たちの煩雑な作業を請け負ってくれる、頼れる存在になるだろう。そして、人間が本来持っている創造性や文化の発達に人間自身がより注力しやすい環境を整えることにも大いに力を発揮してくれるのではないだろうか。すぐ先の未来に訪れる人工知能という存在を、人間である私たちも今から受け入れる準備をしていくことが必要なのかもしれない。

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