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転職で足枷にもなる希望年収。本当に必要な金額はいくら?

年収はあなたの値段ではなく、役割と成果に対する対価に過ぎない

転職を希望される方と面談をしていると、むやみやたらと年収にこだわる方が多いと感じます。転職によって絶対に今の年収よりも下げたくないというわけです。もちろん生活面への不安もあると思いますが、それよりも年収=自分の価値を数的に表したスコアであると考え、プライドによってこだわっている人も少なくありません。

実際に年収は1,000万円以上でなければいけないと、920万円の年収を提示されたために断ってしまった、という実例もありました。差額はわずか80万円です。もしかしたら自分に合った仕事で、将来的に年収が上がる可能性もあったかもしれないのに、初年度の年収のたった80万円の差額によって、チャンスをみすみす捨ててしまったのです。

特に転職し始めたばかりの方にこうした傾向が多くあります。当初は自分に市場価値があると考えて希望年収を高めに設定しているものの、何社も落ちて現実との乖離に気づき、半年後には希望年収が大幅に下がっているケースも。ご注意いただきたいのは、求人との出会いは一期一会であること。初期に過剰に条件を狭めているうちに、いい仕事を逃しているかもしれません。

年収だけが自分が評価されるモノサシで、それを自分の値段のように考えてしまっている人ほど、年収に対して頑なな姿勢になりがちですが、年収はあくまで今いる業界・会社における役割と成果に対する対価に過ぎません。たとえどんな有名大学を出た優秀なエンジニアであっても、時給1,000円の仕事をするなら時給は1,000円。その人自身の価値とは関係なく、生み出す仕事の価値にリンクして年収は上下するものであるということを前提として認識する必要があります。

それに雇う側からすると、前職での給与は一つの参考指標ではありますが、それ以上のものではありません。会社が変われば仕事での役割と成果は全く別のものになりますし、転職したばかりでは、どれだけ活躍してくれるのか読みきれない。だから雇う側が固定費として最初から最大限の金額を設定することが難しいのはやむを得ないことだと思います。

希望年収は松竹梅で設定。10年後の総年収も考えてみよう

先ほど年収の80万円の差額によって入社を断ってしまった事例を紹介しましたが、果たして80万円下がってしまった場合、生活にどれほど影響があるのでしょうか。社会保険料や税金は年収が大きくなるほど増えるため、額面での80万円の違いは、手取りにすると約60万円の差額となります。手取り金額でいうと約720万円から約660万円に変わりますが、根本的に生活支出を見直さなければいけない差ではないのではないでしょうか。

私は希望年収を松竹梅の3段階で設定することをおすすめしています。まず「松」は、現状維持の年収金額。実際これは年収アップになるケースもあります。なぜなら、前職での年収には実績に関する報酬として賞与が含まれていますが、まだ実績を出していない次の会社では転職直後の賞与はありません。つまり賞与分を考慮すると単純な横並びの金額ではないのです。

次に考えるのは一番下の「梅」。もし、あなたが本当にやりたい仕事や生涯続けていけそうな仕事と出会えた場合、トレードオフとして、どれくらいの金額ダウンまで受け入れられるのかを考えてみてください。食費、住宅費、娯楽費、交際費、光熱費などのやりくりも考えて、赤字をださないための内訳なども具体的に想定しておくことも大切。どれくらいの金額があれば望むような暮らしができるのか、その暮らしは本当に求めるものなのか、整理・理解することで必要コストが見えてきます。

最後に「竹」は、松と梅の中間くらいで設定。中には松1,000万円、竹975万円、梅950万円という方もいますが、この幅が狭ければ、自分のキャリアの選択肢の幅も狭めてしまうことにつながります。年収を下げて我慢するというよりも、年収の条件幅を広げることで、この先のキャリアの機会損失を減らすという考えに切り替えていけると良いと思います。

私が転職をお手伝いした方々の事例でいえば、転職した初年度年収は前職時代によりも低い水準でスタートした方が、その後活躍して、昇格昇給を実現しているケースが圧倒的に多くなっています。逆に高い報酬水準でスタートすると周囲の視線も厳しくなり、期待に応えきれずに早期に退職してしまう事例も多くなります。

大切なのは、目先だけにとらわれすぎず、長い目で見ること。たとえ年収ダウンを提示されたとしても、実力さえあれば、あとから成果をあげて昇給することもできるわけですから。特にベンチャー企業であれば、昇進昇格も早く、あっという間に給与が倍になったり、ストックオプションで大きな財産を手にするチャンスを得られたりするケースもあります。また逆に初年度の年収が高くても、その後はなかなか上がらない会社もありますので、報酬の考え方や評価の仕組みを確認しておくことは大切です。

転職直後の年収を輪切りで考えるのではなく、入社5年後、10年後の総収入はどうなるのか、もっといえば社風や仕事にフィットするのかどうかといった充足度をより重視していただきたいと思います。

黒田 真行 氏

ルーセントドアーズ株式会社 / 代表取締役

黒田 真行(くろだ まさゆき)

日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。1989年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。14年ルーセントドアーズを設立。著書に「転職に向いている人 転職してはいけない人」など。2019年、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を開始。
「CanWill」https://canwill.jp/
「Career Release40」http://lucentdoors.co.jp/cr40/